安全なトランポリンを目指して
スポーツに怪我はつきものです。しかし、できるだけ怪我は避けたいものです。事故の発生にはいくつかのパターンがあり、過去の事故を研究することにより、対策がとれることが多いです。しかしトランポリンの事故や傷害に関する資料は少ないです。そこで、インターネットや日本トランポリン協会の広報、論文など調査して、トランポリンにおける事故・傷害やスポーツに関する裁判について調査してみました。事故として記事になるようなもの、裁判になったものですので、多くの場合重大事故です。
「トランポリン広場 J-cube」は民間の一クラブにしか過ぎませんが、これら事故データを蓄積し、法的な問題を整理することで、トラポリンの安全性の確保及び発展に貢献したいと考えております。なお、本コーナーはブログ形式で当面行います。
なお、特設コーナー(資料編)として、「日本トランポリン協会広報における事故報告」はじめました。さらに「新聞報道で見たスポーツ事故」、「体操競技における判例」を近々始める予定です。
救命処置に関する重要なお知らせ(2018.1.5)
日本体育協会コーチ講習(トランポリン・体操競技共通)において救命処置に関して重大なお知らせがありましたので、取りまとめて以下に記載しております。
トランポリン及び体操競技のコーチ・指導者の方は以下をご確認ください。
重要なお知らせ(トランポリン競技・体操競技指導者に皆様へ)
公益財団法人 日本体操協会から発行されている「日本体育協会公認トランポリンコーチ用 トランポリンコーチ 教本」(2017年度版)について、救急処置についてコーチ講習で重大なお知らせがありましたので、啓蒙活動として掲載します。ので、トランポリンコーチならびに体操競技(「体操競技コーチ 教本」にもページが違いますが同じ内容があるようです)は注意してください。
1 血液暴露問題
現在救急処置において流血をしている場合の措置として、血液を介して病気の感染の可能性があるため、血液に直接触れることがないようにゴム手袋(グローブ)などを使用して行うことになっておりますが、「トランポリン競技の特性に応じた基礎理論」編の「Ⅳ.トランポリン競技の傷害」21ページ及び「実技」編「I.救急処置」などではその記述がありません。
血液暴露に注意して、止血処置や血液の処理はグローブを着用して行うようにしてください
2.過換気症候群(過呼吸)の救急処置について
「実技」編「I.救急処置」57ページに「過換気症候群(過呼吸)の場合」の対応法として以下の記述があります
“紙袋かポリ袋で口・鼻を覆い、本人の呼気を吸わせる”
これは通称“ペーパーバック法”といわれる方法で、過去にこの方法が推奨されていたこともあり広く知れ渡っていますが、その後炭酸濃度が濃い空気を吸うことによる死亡例などもあることから現在は、行ってはいけない方法とされています。
テキストに記載された”ペーパーバック法による”救急処置は行わないようにしてください。
本編
資料編
以下は、最新のものです。記事件数が増えましたので、過去のものは上記のページに記載してあります。資料編(日本トランポリン協会の記事、新聞で見たス ポーツ事故)はページ下部に示したページに掲載しています。現在本編では第2部として、スポーツ事故に関する判例や法的な問題について掲載中です。
2015年
2月
21日
土
広報バックナンバー調査結果を終えて
日本体操協会になる前の日本トランポリン協会が発行した広報をざっと調査してみました。だいぶ時間がたっていますが、安全対策マニュアルの完成はまだ先のようです。しかし、教本や、広報No.55号「傷害の回避を願って」、No.62(2007年2月)「トランポリン活動の事故防止に関して ~あなたのクラブの安全管理は大丈夫ですか?~」などに安全管理に関する貴重な資料が掲載されています。またこのブログで紹介したように広報には傷害調査報告やたくさんの傷害事故に関するニュースが載っています。
いくつかについては必読と書いてまいりましたが、指導者・管理者には安全管理に関して勉強する義務があります。教本や広報などに載ったものは、すでに公になっていることです。それらを知らないということは、勉強不足という過失にあたります。
以前本編で紹介したサッカーにおける落雷事故落雷が予測できたかどうかがポイントとなっており、当時の知見から予測可能であるという判断により大会運営者の過失が認定されています。同様に教本・広報などに載ったものは、トランポリン関係者は知っておかなければならない事柄、安全上の予測できるものとして扱われるものと思いますので、改めて教本および広報を読み直すことをお勧めします。
広報バックナンバーが全部インターネットで見ることができるようになりましたのでざっと目を通して必要と思われる記事を紹介してきました。全部目を通すのは大変ですので、ここに紹介した部分だけでも読み直してくれると幸いです。そうすることがトランポリンの安全を向上につながりますので。なお残念なことは日本トランポリン協会が解散してしまい、その後広報がなくなってしまったことです。
2015年
2月
01日
日
骨折事故
ほとんどの親は子供が骨折したと聞けば、大けがをしたと思うのではないでしょうか?
トランポリンでは全身麻痺に至る脊髄などの損傷事故の危険性があるため、これらを重大事故と考えることが多いですが、世間一般では骨折事故は大怪我と考えるのです。
骨折事故の場合、入院を要しないことが多く、現状の報告義務では除外されてしまうことが多いです。しかし、昔行われた大学トランポリン選手の傷害調査結果にあるようにトランポリンにおける骨折事故は珍しいものではありません。
普及指導員の指導範囲では、脊髄損傷事故の可能性は低く相対的に重大事故というと骨折事故を指すことになると思われます。
骨折事故を減らすことが普及における安全性の向上につながると思いますので、入院を要しない怪我にまで報告義務を広げるべきと考えます。
2015年
1月
03日
土
No.70(2009年12月)
No.68(2009年3月)にも書かれていましたが、事故に関する情報が得られるのは非常にまれです。でもマスターズの事故については、人づてに聞いております。このような状況は日本トランポリン協会でも同じようです。
No.70号9~10に「登録選手団体の義務について」という記事が掲載されています。そのなかで、「重大な事故(傷害)が数件発生しておりますが、当該団体からの報告ではなく伝聞でしかなく」と書かれていることからもわかります。
そこで、1週間以上の入院を伴った事故については、報告を義務としています。また傷害保険加入を証明する資料を登録時に必要としています。
重大事故の発生防止は重大事故を調査すればよいというものではありません。ヒヤリハットの法則を考えれば、小さな事故を調査することで大事故の発生は防げるものといわれています。つまり重大事故だけではなく、小さな事故(ほんとは事故になりそうになったものから調査することが望ましいのだが、その報告を義務化するには全国的な組織による報告マニュアルなどの整備が必要で、現状ではそれは過大すぎる作業と思われるので)、すなわち医療機関に受診したまたは傷害保険を利用した事故についてはすべて報告するようにした方がよいのではないかと考えています。
また、組織が日本体操協会となりましたので、体操競技におけるトランポリン事故も含めて調査することが、より安全なトランポリンになると思われますので、体操競技部門とも連携して調査していただけることも望みます。
2014年
12月
20日
土
No.69(2009年6月)
13ページに「大会エントリーに有資格者監督制度」を導入することが報じられています。競技会の安全対策として、日本トランポリン協会主催の大会に参加する場合は、監督・コーチは日本トランポリン協会のコーチの有資格者に限定することに変更しています。
この制度により、宙返りを指導範囲に含んでいない普及指導員が監督・コーチをすることができなくなりました。指導者を制限することで、安全を確保するという方法です。
この対策にどれほど効果があるのかを判断するには、今後の競技会における事故の発生具合を調べる必要があると思われます。
対策を施してもその効果を計測しなければ、対策が有効であったかどうかはわかりません。対策は効果があって初めて意味のあるものですので、対策の実施と効果測定はセットで考えなければいけないと思います。
2014年
12月
13日
土
ルール変更
スポーツにおいて、ルールは非常に重要です。
ルール変更による選手への影響は非常に大きく、そのため、前回書いたように、未習熟な種目を取り入れる選手が出てくるという危険な状態を引き起こしています。
また以前書いたように器具が変更になっても影響は大きいです。
これらの変更を行う場合は、関係者に十分な周知と、選手がルール変更に対して十分練習を積み安全性を損なえない程度の期間を与えることが大事だと思います。
それがルールを作る側の義務だと思います。
2014年
12月
06日
土
No.68(2009年3月)2
前回の続きです。競技会の安全確保について書きます。安全確保の必要性については、ルールが変更になり、演技構成の中に取り入れなければならない種目を増やさなければならなくなり、そのため未習熟な技を無理やり演技構成に取り入れる選手が現れることが予想され、その結果重大事故につながるという予測が立っています。
まさに危険の予測です。未習熟な種目をする選手の登場を回避することは困難であることから、そして危険回避の対策として、競技会場の安全確保を強化するとなっています。
残念ながら具体的な方法は書かれていませんでした。具体的な方法を公開することで、地方大会等でも準じて対応することにより安全性が確保されていくのではないかと思います。
2014年
11月
23日
日
No.68(2009年3月)
4~6ページに、競技部研究安全対策委員会から「現状と今後の課題」が掲載されている。
その中で、安全対策マニュアルまだできていないが、早期に作成する予定であるとされています。
そして、実質的な活動として
1)事故調査、2)競技会場の安全確保 が挙げられています。
事故調査については、情報入手が難しいことが報じられています。しかし、「事故を調査し、そこから具体的な安全対策に通日教訓を導き出すことが有効」と書かれています。まったくもってその通りです。本コーナーもそれを目的に行っています。ただし、1民間事業者が行っていますので、全国のトランポリンクラブから情報を直接得ることはできません。かわりにインターネット、文献調査によって調べた結果をここに公表しています。
個人でこれだけのことができるのですから、協会がきちんと組織立って行えばもっと多くの事例が集まると思います。それはトランポリンの安全性向上に非常な対策になると思われますので、もっと積極的な活動に発展していただけることを希望します。
2014年
11月
16日
日
No.68(2009年3月)
前回の事故記述に続いて、「練習中の大怪我がここ最近発生しています。」とあります。このことから、練習中の事故が発生していること、それが協会に報告されているということがわかります。
練習の事故に対しては、
1.選手には基礎の習得、安全な段階練習の実践
2.指導者には幾重もの安全装置の配置
を啓蒙しています。
協会に事故の報告はされているようですが、事故の分析が行われているかどうかはわかりません。ぜひ事故の原因追究および対策を公表してほしいものと思います。
2014年
10月
25日
土
No.67(2008年11月)
再び広報の記事紹介に戻ります。10~11ページにインドパシフィック大会の岡島先生の所感が掲載されています。そのなかで、「大きなけがはなかったものの、試技直前で2名の選手が捻挫をした。」とあります。棄権するほどのけがではなかったようですが、選手の危険回避能力不足が報じられています。
以前書いたように選手はスポッターに対する責任あります。選手自身も危険回避能力を身に着けなければ、スポッターをけがさせた場合は、過失責任が問われることになるでしょう。そこを踏まえて練習する必要があります。
なお、8~9ページにも当大会の報告があり、こちらには、今後この規模(年齢別やインパシなど)の国際大会にもトレーナーなどの帯同を検討する時期に来ていると締めくくられています。こちらは協会としての安全管理(事故対策)上の責任についての話題となっています。
2014年
10月
11日
土
スポッターについて2(スポッターが受傷した場合)
中田選手のように落ちてきた選手を助けようとして、受傷する事故は少なからず起きていると思います。実際地方大会でまるでプロレスを見ているようなシーンを目撃したこともあります。
スポッターがけがをした時、選手に過失があれば、過失責任が発生します。選手の過失とは無謀な挑戦、調整不足・練習不足の演技種目の実施など、またバランスを崩した時中断するか続行するかの判断ミスなども過失となりえます。選手自身の感覚ではなく客観的に見て問題なかったかどうかが法律上では検証されることになります。
競技会では、No.61(2006年11月)に書かれているように、器具の性能差による影響により練習通りの演技の実施が難しいこともあります。事前の練習でできないものを無理やり行った場合などは、やはり判断ミスとも言えます。当日の体調不良なども含めて当日の状況に応じて選手は難度を下げるなどの安全対策を行う義務を負っています。
トランポリンは個人競技でけがをするのも自分自身の責任そう思われがちですが、トランポリンでは安全対策として、スポッター制度を採用しています。場合によっては自分自身のけがではなく、スポッターという第3者に危険を及ぼす可能性があると常に心がけておかなければなりません。