安全なトランポリンを目指して 第2部:裁判例

2013年

12月

22日

スポーツにおける事故

 さて、今までトランポリンの事故について書いてきましたが、事故情報だけでトランポリンの事故の発生原因調査はあまりありません。またトランポリンに関する裁判例なども少ないです。しかしスポーツにおける事故例・判例などはかなり多くあり、それを知っておくことは非常に重要です。そこで、今回からスポーツにおける事故と判例について紹介してきます。

 スポーツ全般の判例の動向についての論文が早稲田大学から出ています。

 http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/3799/1/100009_01.pdf

 ちょっと難しいですが、スポーツと法、過失責任についての基本的な考え方も書かれていますので、一読しておく価値はあります。

2013年

12月

29日

トランポリン指導者として知っておくべき判例 その1 四つ葉子ども会事件

 今回取り上げるのは、トランポリンの事故ではありません。スポーツ指導者なら知っておくべき事故です。この事件は子ども会活動で発生した事故に関するボランティアの責任が裁判で争われた例です。事故ではなく事件として書いているのは、刑事事件としても扱われたからです。でも刑事事件では無罪、民事事件では過失責任があるとされ、この事件がきっかけで全国の子ども会活動が一時期停滞するという社会的に影響の大きかった事件です。

http://top-page.r-cms.biz/topics_list3/

2014年

1月

05日

トランポリン指導者として知っておくべき判例 その2 公立中学校クラブ顧問教諭監督責任国賠訴訟

 今回取り上げるのもトランポリンの事故ではありません。しかし「トランポリン 判例」で検索すると必ず出てくる事件です。トランポリンを勝手に使用した生徒とそれを注意した生徒の間でけんかになり、失明したというものです。傷害事件ですが、それだけではすまず、ケンカの原因は学校の監督責任として国家賠償法に基づき損害賠償が請求された事件です。2審では学校側に過失責任が認められています(最高裁では別の結果になっています)

 この事件は国家賠償法に基づく、公立学校に対する国や地方自治体に対する損害賠償責任と、監督責任について争われて事例としてよく知られた判例です。

 http://www-cc.gakushuin.ac.jp/~e980064/tsuneoka-seminar/ronbun/yokoyama.html

 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319122056948011.pdf

 前回の判例はボランティアの人にも過失責任があることが認められ、今回の事件は学校においては学校の管理上の過失責任を認めた判例です。

2014年

1月

12日

トランポリン指導者として知っておくべき判例 その3  サッカー落雷事故

 この事件は、サッカー大会中に発生した落雷により選手が受傷したことに対して、学校や主催者の過失責任が争われた事件です。

 http://h-m-d.blog.so-net.ne.jp/2008-09-18

http://kyuuenkai-ehime.org/index.php?%E5%9C%9F%E4%BD%90%E9%AB%98%E3%82%B5%E3%83%83%E3%82%AB%E3%83%BC%E8%90%BD%E9%9B%B7%E4%BA%8B%E6%95%85

 http://www.nikkansports.com/ns/general/f-so-tp0-060313-0008.html

 

 落雷は予見可能として、損害賠償責任が認められ、その結果として被告の一人である高槻市体育協会が損害賠償金の支払いのために解散することになったという大きな社会的影響を与えた事故です。

 http://www.47news.jp/CN/200906/CN2009060901001078.html

http://blogs.yahoo.co.jp/fum_0015/57845959.html

 

 ちなみに体育協会が解散する例はあまりありません。市町村の合併などにために発展的解散を除けば、筆者の知る範囲では、古河市体育協会が2013年に解散したぐらいです。これは体育協会が特定の政治家を支持したり、役員の関係業者を使ったりしたことより、市立体育館の指定管理者業務を失い、それに伴い補助金ももらえなくなったことに起因する経済的な理由からの解散のようです。上記2例のように体育協会が破産するということは珍しいですが、経済的に破たんすることがあるということを示しています。

 

 さて話を判例の話題に戻しますが、前々回の判例はボランティアの人にも過失責任があることが認められ、前回の事件は学校においては学校の管理上の過失責任を認め、今回の判例では大会を主催した者に対しても過失責任を認めた判例となっています。

2014年

1月

19日

トランポリン指導者として知っておくべき判例 コメント1

 3つの事故とそれに伴う裁判例を紹介しましたが、四つ葉子ども会事件では、ボランティア、すなわち無償で行っていることに対して、損害賠償責任を負わせるのはおかしいという批判もあったようですが、最終的には民事裁判で過失責任があるとされています。

 つまり、無報酬といえども責任はあるということです。

 トランポリン指導者の多くはボランティア(有償ボランティアのケースも多い)ですが、指導者としての責任は無償であっても存在するということをこの判例は示しています。

特に公共体育館でトランポリンを使用する場合は旧日本トランポリン協会(現日本体操協会トランポリン委員会)の普及指導員を持っていることが条件になっていることが多いです。

 このことは普及指導員、すなわち専門家がいることがトランポリンの貸し出し条件となっていますので、一般の人が引率を行った子ども会の事故などよりも、専門家としてより高度で重大な責任が発生するものと思われます。

 なお、スポーツ支援団体でNPO法人を取得しているところはかなりありますが、NPO法人は地方自治体同様営利目的ではありませんが、消費者契約法上、「事業者」として扱われますので、監督責任は指導者個人だけではなく、法人としても責任が生じると思われます。

 なお、ボランティア活動の責任については、以下のサイトが非常に参考になります。

http://www.sonpo.or.jp/archive/publish/bousai/jiho/pdf/no_221/yj22114.pdf

http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/limedio/dlam/B14/B1401469/8.pdf

2014年

1月

26日

トランポリン指導者として知っておくべき判例 コメント2

 3つの事故のうち、「公立中学校クラブ顧問教諭監督責任国賠訴訟」では、監督責任が争点でした。この事件では、本来の活動とは異なる生徒間のトラブルについてですが、それに対しても指導者責任・監督義務が発生する可能性があることを示しています。また設備の設置者・管理者としての監督義務の可能性も示しています。

 前回も書いたように公共体育館では、指導者がいることが貸し出し条件となっていますことから、指導者は常駐する必要があり、指導者が不在で練習させるような場合、貸し出し契約に対する契約違反とも言えます。そのため、監督責任は判例よりも大きくなるものと思われます。

 またこの事件では、トランポリンの管理上の責任が問題となっています。このことから体育館や寺子屋トランポリン、個人でトランポリンを所有する人なども管理上に過失責任があれば、責任を負うことがわかります。

2014年

2月

09日

トランポリン指導者として知っておくべき判例 コメント3

 最後に紹介した「サッカー落雷事故」では自然災害である落雷が予測可能だったかどうかが争点でした。最終的には予測可能とされそのため、所属チーム(県立高校サッカー部だったため県)と大会主催者(体育協会)に対して損害賠償が認められた判例です。

 この事故では、当時の知見から落雷の予測が可能だったかどうかが問題となったようです。つまり、その時の社会の常識を身に着けておくことが必要であるということです。むかしは予測不可能とされことも、科学技術の進歩や過去に起きた事故などの要因分析の結果、予測が可能と変わることも多くあります。指導者や大会主催者は常に最新の情報を知り、最新の技術を学ぶ責任があるということになります。

 トランポリンにおいては、このコーナー最初にも書いたように、傷害に対する情報が流れておらず、原因分析が行われていませんが、過去にあった事故を知らないということは、同じ原因による事故を予見できないということであり、同じ傷害がほかの場所で再発する可能性を秘めています。それを防ぐためには、事故の情報と原因分析、それを防ぐための安全対策の整備が必要となります。

 詳細は以下のサイトをご覧ください。

 http://www.chukyo-u.ac.jp/educate/law/academic/hougaku/data/42/1=2/nagao.pdf

2014年

2月

23日

スポーツの判例集

 前回までは筆者が最低限知っておくべきと思う代表的な3つの判例について紹介しましたが、そのほかにもスポーツの判例は結構あります。判例タイムズのような専門誌は自分のような一般人には敷居高いですが、スポーツと法律について書いてある書籍も数多くあり、代表的な判例はそれらの本を見れば載っています。トランポリン指導者や団体代表をしているのでしたら1冊ぐらいは目を通しておいたほうがよいと思います。

 代表的な例とその解説はそれら書籍に頼るとして、ここでは、手軽に調べられるインターネットで見つけた判例などを紹介したいと思います

2014年

3月

02日

台湾チェアリーディング事故

 これは国外の事故です。リアリーディングのバスケットトスという空中に放り投げて受け取るという技で、キャッチに失敗してコンクリートの地面に落ち死亡したという事故です。

 http://japan.techinsight.jp/2011/11/081500_cheer_girl.html

 トランポリンも同様高く、跳びあがります。同じようにトランポリンから転落した場合は、死亡する可能性も十分あります。

この事故では、安全面の配慮がないとして指導者が過失致死で送検されているということで(つまり刑事事件)、国外の事件ですが、国内でも同様事故が起きれば、刑事事件になる可能性があります。

2014年

3月

09日

水泳逆飛込み事故

 水泳は子供の習い事ランキングでトップであり、学校体育にも取り入れられており、実施者が多いため、相対的に事故件数も多いです。水泳では、呼吸のできない水中で行うということからほかのスポーツよりも死亡事故が多いというのも特徴です。ある意味大衆スポーツの中で最も危険なスポーツであるともいえます。そのため、訴訟事例も数多くあります。そこから施設管理者や指導者の監督責任について学ぶべきことは多いと思います。

 http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/download.php?file_id=61260

 

 このような事故を受けて水泳連盟がまとめた資料がこちらです。

 http://www.ebetsu-suiei.com/pu-ru.suisinn.htm

2014年

3月

16日

ソフトボールスライディング事故

 今回はソフトボールにおけるスライディングによる傷害に対する判例です。

  http://www.geocities.jp/cs12070501/grid9.html

 スライディングというルール上禁止されていない行為に対しても、危険行為として損害賠償が認められたそうです。

 トランポリンは個人スポーツですので、危険行為をすれば、けがをするのは、たいていは本人です。でもそう言い切れないケースもあります。

 ところで、競技会において選手がトランポリンから飛び出し、スポッターがキャッチしたということを何度か見たことがあります。一度は支えきれずスポッターの人が後ろに転倒したのを見たことがあります。選手・スポッターとも幸いけがはなかったようですが、その様はまるでプロレスの試合のようでした。

選手が無理をして、それを助けようとしたスポッターにけがを負わせる危険性もあります。その際、選手自身の技能や練習内容から、演技構成などに無理があれば、危険行為として扱われる可能性もあると思います。スポッターは選手の安全のために配置された人ですが、選手にもスポッターの安全を守る義務があると思います。

2014年

3月

23日

学校柔道事故の判例

 トランポリン使用に起因する生徒同士のけんかに対して学校の監督責任が争われた判例は、以前紹介しましたが、今回は学校柔道部における事故の判例です。

 この事故では学校側の責任が認められ、遷延性意識障害になった生徒に対して15千万の損害賠償が認められているそうです。

http://nyuta.lolipop.jp/hana212.htm

 

 なお、学校の部活における柔道の事故はかなり多いようで、他にも探せばたくさんあります。

 なお、上記は学校部活における事故ですが、柔道については、民間道場の事例も以下のようなものがあります。学校の事例ほど多く見当たらないような気がしますが、これは学校の部活は学校の業務の一部を行っている指導者と道場という事業者の職業的指導者による差があるのかもしれません。

http://m244.blogspot.jp/2009/08/blog-post_8390.html

2014年

4月

13日

高校体操部 注意義務違反による損害賠償

 今回紹介するのは高校体操部における頭部落下による頚椎損傷事故における損害賠償事例です。12千万の損害賠償が認められています。

http://edugarden.blog50.fc2.com/blog-entry-2119.html

 

 この事故の種目は平行棒ですが、記事内容によると事故に対する注意義務・管理責任はトランポリンに共通する点も多く非常に参考になる事故です。

 なお、この事例では、損害賠償金額が1億を超えています。一般的に利用されているスポーツ安全協会の賠償責任保険では不十分であることがわかります。このような時に備えて、旧日本トランポリン協会(現日本体操協会トランポリン委員会)では、宙返り種目の指導をする際に必要となっているコーチ資格取得者は別途指導者賠償責任保険に加入することになっています。

2014年

5月

11日

バラエティ番組事故

 今回はまず、韓国で最近発生した事故を紹介します。

 http://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=1972416
 タレントが収録前にダイビングの訓練ために行ったトランポリン練習中に、足首のねん挫と前十字靭帯きったようです。

 実は、国内でもテレビ番組中の事故は起きています。

 http://blog.livedoor.jp/kamome_3ya/archives/50283008.html

 こちらはサッカー選手がバラエティ番組収録中に金属フレームにぶつかり足首をねん挫したようです。このほかにもトランポリンを使ったバラエティ番組で腰落ちを失敗して首から落ちて、番組途中で棄権したタレントさんもいました。

 最近だと、飛び込みで重大事故が起きていますが、テレビ収録中の事故は多いようです。ビートたけしさんが首を曲げる癖もトランポリンでけがをしたためといわれています。

2014年

5月

25日

トランポリン死亡事故

 さて前回までは、有名人のトランポリン事故を紹介してきましたが、幸いにも重大な事故ではなかったようです。トランポリンにおける重大事故は宙返りなどの失敗による頭部からの落下と、トランポリンからの転落事故です。

 では、トランポリンで死亡した人はいるのでしょうか? 残念ながら国内で少なくとも1名はいるようです。

 以下の論文の中で行われている既往研究調査の中に死亡事故があったことが紹介されています。

「競技トランポリンの安全指導に関する研究 -傷害に関する考察-」藤田 一郎

北見工業大学研究報告 24(1), 43-58, 1992

 原因は3/4前方宙返り中、回転不足で頭部から落下ということです。

 現在トランポリンでは、宙返りを指導してはいけない資格(普及指導員)と宙返りを指導することができる資格(コーチ)2つに分け、コーチ資格のない指導者(無資格コーチ)による宙返り指導を排除するように務めています。

2014年

6月

08日

トランポリン重大事故

 前回は死亡事故を紹介しました。調べた範囲では国内では1件しかなさそうです。しかし、頭部からの落下による頚椎損傷事故は少なからず起きています。

 次に紹介するのは日本トランポリン協会の広報に載った事故で、また中日新聞にも掲載された有名な事故なので、トランポリン指導者になら知っていると思いますが、改めて紹介しておきます(56ページ参照)。

http://www.japan-trampoline.com/jgapdf/koho/kouhou60.pdf

 アミューズメントセンターで宙返りをする仕様になっていない遊具(回転禁止の表示がある)で宙返りをしたことが第1の原因のようですが、以下のサイトにある弁護士のコメントにあるように常時監視者や指導者のいない状態で使用できるトランポリンであったことも大きな原因のようです。

http://venacava.seesaa.net/article/16063414.html

http://www7b.biglobe.ne.jp/~asp/aspnews149.html#03

 訴訟には至らなかったようですが、弁護士が登場していますので、アミューズメントセンターの過失責任の有無が検討されたようです。

 なお、アミューズメントセンターはその後事故のあった施設と関連施設6か所合計7台のトランポリンを撤去したようですが、このようなトランポリンが少なくとも7か所にあったということがわかります。合計7か所も施設を所有しているということは、かなり規模の大きい会社が運営していると推定できます。そのような大手でも事故を防げないとなると、エア遊具のようにいずれ社会的な問題として扱われることになる可能性が大きいと思われます。

2014年

6月

22日

トランポリンでの頸椎損傷事故

 前回脊椎損傷の事故について書きましたが、死亡に至らなくとも後遺症の残る重大な事故は少なからず起きているようです。

 その中で車いす生活など社会的な不利な状況にあっても活躍している人や支援者がホームページで紹介したり、ブログを書いたりしている例があります。その中から事故の状況を拾ってみました。

http://kurumaisudanshi.genin.jp/profile.html

 原因:スノーボーダーの方がはじめてトランポリンを行った時に、初めてであるにもかかわらず宙返り(バク宙)を行って頭部から落下

 

 http://www.k-kou.co.jp/product/taiken/normalization/main.html

 原因:何気なく遊んだトランポリンから転落

 

 http://doctoralcarrasco.blogspot.jp/2009/12/blog-post_06.html

 原因:友人のまねをして不慣れな技を行って

 

 http://www.asahi.com/articles/ASG5G2R14G5GUTIL003.html
原因:練習中に頭から落ちた

 

 上記の4件うち3件は前回紹介したのと同様、トランポリンの経験が浅いあるいは行う種目自体が不慣れな状態で、トランポリンを行って、頸椎損傷などの後遺症の残る傷害を受けています。前回の事例を含めて5件の内、転落が1件で、後は全て頭部からの落下(内2件は宙返りの失敗、2件は不明)

 このことからも、基礎的な練習の必要性と正しい練習法が行える指導者の存在が必要であることが分かります。

2014年

6月

29日

トランポリンでの頸椎損傷事故2

 前回紹介したものは、全てトランポリン経験の浅いものによる事故で、指導者の存在はなかったと推定される状態での事故です。でも、指導者のいると思われる状態でも頸椎損傷は起きています。大学トランポリンクラブ所属したものの事故例です。

  http://www.kokoroweb.org/example/uchiyama-san.html

 

 事故の状況は分かりませんが、以前紹介した判例にあるように学校の部活では担当の顧問などが不在で事故が発生することがあります。そういう場合は、先の判例のように管理責任が問われることがありますので注意が必要です。

次は、指導者(体操クラブ)自身が、気のゆるみで受傷した例です。

  http://www.geocities.jp/nmurakami827/

 指導者や熟練者といえども練習する際には、補助者を用意するなど安全対策をとるべきだと思います。トランポリンなど宙返り種目は重大事故の危険性が常に存在することを前提に指導と練習環境を整える必要があります。

2014年

7月

06日

トランポリン指導者事故

 前回体操クラブの指導者の事故について書きましたが、重大な事故ではないですが、指導者がけがをした事例がありましたので紹介しておきます。

 http://trampoline.junglekouen.com/d2011-03.html

 

 この次のブログと合わせて読むと、新技に一人で練習していて起きた事故ということがわかります。

http://trampoline.junglekouen.com/e388314.html

 

 トランポリンに限らず、スポーツには必ず何らかの危険性が潜んでいます。前回も書いたように、指導者や熟練者といえども練習する際には、補助者を用意するなど安全対策をとるべきだと思います。指導者の立場では、その点は十分配慮して指導している人でも、当事者として自分がけがをすることになるとは予想していないことがあるという事故事例だと思います。

 なお、事故の発生は慣れないことをし始めたときと、慣れて油断しているときに起きることが多いです。この事故は前者に当てはまりますので、事故の発生は予測可能な範囲で起きた事故とも言えます。十分予想できる範囲で発生した事故の場合、サッカー落雷事故の例のように指導者の過失責任となりますので、予測できる危険に対しては十分な対策を施すことが指導者には求められています。

2014年

7月

13日

トランポリン指導者事故2

 前回紹介したブログにはもう1つ重要な情報が書かれています。それは若いころとの比較です。加齢による運動能力低下は確実に発生します。加齢とともに若いころのように体が動かなくなりますが、頭の中では若頃のイメージが残っており、イメージと実際にずれが起きるのは、ある程度の年齢に達した人なら良く経験していると思います。つまり、加齢による能力低下による失敗というのも十分予測できる危険性です。

 同様に、学生から社会人になったばかりでは年齢による低下はあまりないかもしれませんが、練習量の低下などによる環境の変化があります。学生時代と同じように体が動かなくなっていることは十分予想されます。このように環境の変化があったものに事故が起こりやすいということも予測できる危険性です。

 そこまでの環境変化はなくとも練習をしばらく休んでいた人、ブランクのある人などは同様に理由により、復帰時に事故を起こしやすいということも、予測できる危険性です。

 このほかにもさまざまな危険は予測可能なことが多いです。その予測をもとに対策を講じることが指導者の責任です。

2014年

7月

20日

情報収集

 このブログの書き始めに書いたように、ここ数回で紹介したように被害者本人や支援者が公開している情報もありますが、法的な責任問題や被害者のプライバシーの関係から、重大事故の情報は余り公開されていないようです。そのため実際の事故例より見つかった事故はかなり少なくなっているものと思います。

 一般的にこのような事故情報は、マスコミに載るか、関係者の口コミで伝わってくる不正確な情報で事故の存在を知ることが多いです。しかし、当事者や報道機関だけが事故を公表しているわけではありません。もう1つの関係者である医療従事者が事例として研究発表している例もあります。内容は入手できていませんが、タイトルだけでも重要な情報を含んでいますので、次回からそれらについて紹介します。

2014年

7月

27日

重大事故例 医療論文から(その1)

 タイトルだけで具体的な内容は分かりませんが、日本脊髄障害医学会雑誌 巻:20 号:1 ページ:60-6120070401日)に「トランポリンによるC5頚椎脱臼に伴う脊髄損傷の1例」という論文が掲載されているようです。

 著者は「小石逸人 (呉医療セ 整形外科)、尾上仁彦 (呉医療セ 整形外科)、信貴経夫 (呉医療セ 整形外科)」となっていることから呉市付近であった事故のようです。

http://jglobal.jst.go.jp/public/20090422/200902236465998135

http://www.doc88.com/p-061195301151.html

2014年

8月

31日

重大事故例 医療論文から(その2)

 次の事例は、宙返りの失敗による事故で、被害者は車いす生活を送っているようです。

著者は「関東労災病院 金沢成志、小高啓正、白川 守、宮原卓志、村西義雄」となっていますので、関東で起きた事故のようです。

 http://www.hi-ho.ne.jp/mtpengin/jiko1.htm

2014年

9月

28日

重大事故例 医療論文から(その3)

 つぎは、第18回瑞穂卒後研修セミナー(2003.11.28, 名古屋)というセミナーで報告されたものです。

「トランポリン喫茶で受傷した頚椎外傷の2例」(著者:前田直人,種田陽一,日比野仁子,久保田雅仁,渡邊宣之,家田靖久,市川義明)

 具体的な事故内容は分かりませんが、この報告のタイトルから同一施設で2件の頚椎外傷事故が起きていることが分かります。タイトルからどこの施設かも特定できます。同一施設で2件というのは、かなり多いように思われます。事故の発生した施設はトランポリンクラブのようにきちんとした練習環境がある場所ではなさそうです。

http://www.med.nagoya-cu.ac.jp/ortho.dir/happyou2003.html

2014年

10月

05日

重大事故例 医療論文から(その4)

 今回は頚椎等の事故ではなく膝の怪我に関する論文です。

 http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I8689130-00

前十字靱帯損傷と膝蓋腱断裂の事故です。余り医療には詳しくないのですが、論文になるということは両者が同時に起こる事故というのは珍しいのかもしれません。

宙返りによる事故は後遺症の残る重大な事故であることが多いのですが、事故件数から言うと、捻りに伴う膝や足首の怪我の方が多くあります。この点は危険を予測するのに非常に重要な情報ですので、今回取り上げておきました。