第1回 「H バッチ・テスト、シャトルゲーム」

 普及指導員講習教本は、「トランポリン普及元年(平成20年)」と称して、エアリアルトレーニングにボールトレーニングが追加になったり、トランポリン愛好者用の競技検定が新設され、大改定されます。今回からは、その改定前の資料であり、普及指導員講習でサブ教材として用いられていた塩野尚文先生の著作『エアリアル・トレーニング 子どものトランポリン運動』(道和書院)からエアリアルトレーニングがレクトラ向けではないことを示した点を紹介していきます。なぜならこの本はバッジテストが新設されたのを受けて出版された書籍だからです。

 今回はまず、「H バッチ・テスト、シャトルゲーム」からです。そこでは以下のように書かれています。

 

 “小学校低学年を対象に、将来どんなスポーツ競技に進んでも役立つような空中感覚の養成(スポーツの素養づくり)を目的にしたトランポリン教室を手広く行っている石川県では、その成果の発表の場として教室交換会を行ってきた。

 交換会の内容は、10種目の自由演技によるトーナメント形式で、競技会のような外形的な美しさにとらわれず、リズム、バランス、力強さを評価の対象としていた。しかし、回を重ねるごとに盛大になり、参加人数も500~600名と膨れ上がり、父兄の応援にも熱が入り始めた。

 その結果、競技的な傾向に走り出し、膝やつま先を伸ばしてレオタードを着ないと入賞できなくなった。

 元来、スポーツの素養づくりは幅広い空中動作を経験させることに意義があるのだが、交換会で勝たせるためには、よりポピュラーな技を5~6種目教え、10種目を構成し、それのみを反復しなければならなくなってきた。そうなると初期の目的は失われてしまう。

 こうした傾向がはっきりと目立ち始めた昭和52年頃から教室交換会の見直しが始まった。

 筆者はスポーツの素養づくり子どものトランポリンの運動処方として、バッヂ・テストおよびシャトル・ゲームを考案し、まず金沢市トランポリン協会をモデルケースとしてその運動処方を実施し、修正を重ね、有効性を確認した後平成4年から全国実施に踏み切った。“

 

 上記の文では、バッジテスト・シャトルゲームが考案されたいきさつが書かれています。それは本来“どんなスポーツ競技に進んでも役立つような空中感覚の養成(スポーツの素養づくり)を目的”にしていたエアリアルトレーニングの成果の発表の場である教室交換会が徐々にその目的から離れ競技志向を強めていったこと、勝つための技術習得に傾いて行ったことが示されています。そこで、バッジテストとシャトルゲームが作られ、交換会のかわりにバッジテスト会・シャトルゲーム会が行われるようになったのです。つまり、バッジテストはエアリアルトレーニングを目的に行う子供たちが、トランポリン競技、トランポリンというスポーツに向かうことを防ぐことを目的として作られたものなのです。