余談8 背落ち

 段階練習表(普及版)は社会人を対象に、運動経験がない社会人でも宙返りができるように作られたものです。

 一方、普及指導員は60番まであるこの段階練習表(普及版)のうち、30番までを指導できることになっています。また本来普及指導員の指導範囲に背落ちを含むべきではないのですが、段階練習表の制定は普及指導員制度より古いため、この部分に背落ちが含まれてしまったようです。

 ただし普及指導員が指導できる背落ちはこの腰落ちからだけです。それ以外の状態からの背落ちは普及指導員は指導してはいけないものとなっています。

 また過去には普及指導員には1種と2種があり、1種は45番まで、2種は30番まで指導範囲になっており、普及指導員1種は背落ちが指導できました。ただし現在は普及指導員はかつての2種に絞られ、1種は廃止された状態であり、31番以降の種目はコーチでなければ指導できないことになっています。

 また、「腰落ち-水平背落ち」が段階練習表(普及版)の30番までにははいいていなければ、普及指導員は宙返りおよび背落ちは指導できないと言えるのですが、歴史的経緯のため普及指導員の指導範囲の中に例外的に「腰落ちからの背落ち」が含まれてしまっています。

 「腰落ち-水平背落ち」が段階練習の29番になっていることと、過去の普及指導員制度では背落ちが指導できるケースもあったこと、さらに、「宙返り」の指導はできないことを強調し過ぎたため、普及指導員が本質的に背落ちも指導できない種目であることの認識が薄れてしまったため、現在でも普及指導員は背落ちを指導しても構わないと勘違いしている指導者がいます。万が一普及指導員が背落ちを指導して事故を起こした場合は、普及指導員の指導範囲を守らなかったことが指導上の過失となる可能性は非常に高いです。非常に危険な誤解が世間に広まっているように感じます。