衝撃力2

 以前書いた「衝撃力」について質問がありましたので、今回はその補足を書きます。

 

 衝撃力の算出は難しく「衝撃力」で用いた数式で評価することが行われています。ここで問題はΔtの評価です。このΔtを評価することが非常に難しいと言われています。

 幸いトランポリンについては、過去に着床-離床の時間を調査したものがいくつかあります)。その結果が0.2~0.3秒となっています。

 落下の速度はベッドに着床する瞬間が最大で一番沈んだ時に0になります。トランポリンの金属バネは線形弾性体と考えられますので、伸びるときも縮むときも同じ動きをすると考えられます。つまり、着床から離床までが0.2~0.3秒なら、Δtはピーク速度から0になるまでの時間ですので、この時間を半分にして0.1~0.15秒として評価してよいと思います。そうすると「衝撃力」で書いた様に衝撃力は体重の6~10倍程度となります。

 高さ5mから落ちるというのは大体3階の窓枠にぶら下がっている人が地面に落ちるのに相当します。地面の場合トランポリンと異なり地面にぶつかってから速度が0になるまでの時間は0.1秒もかかりません。地面の場合トランポリンと異なり沈み込む時間は感じられませんので、停止までの時間は桁が違うと思います。仮に地面にぶつかってから0.01秒で停止するなら60~100倍の力が発生することになります。それと比較すれば体重の10倍程度の衝撃力というのは小さなものと考えられます。

 ところで、ジョギングなどでも体重の3倍~5倍程度の衝撃がかかると言われています。

 ジョギング程度の運動でも3倍~5倍の衝撃力がかかるのです。ジョギングの場合片足着地で、トランポリンの場合両足着地ですので、片足にかかる力は半分と考えられます。つまり片足にかかる力は体重の3倍から5倍となります。トランポリンの脚にかかる衝撃力はジョギングとほぼ同じと言えます。ジョギングは特別な動きではなくごく一般的な人の動きと言えますので、それと同等ということは、トランポリンではそれほど大きな衝撃力はかかっていないということになります。

 衝撃力が体重の何倍という表現は一見非常に大きな印象を受けますが、極めて短時間に発生する衝撃力では、数倍程度というのは日常的に発生することなのです。

 5mの高さから落ちても体重の10倍程度しか発生しないということが、トランポリンの緩衝力のおかげといえるのです。そのおかげでジョギング程度の衝撃力しかかかっていないと言えると思います。

 最後に、トランポリンの緩衝力というのは、物理的には、速度変化の時間、停止までの時間を長くすることにより衝撃力を低下する性能のことを意味していると言えるのではないかと思います。